金融

預金者の保護

情報の非対称性の存在は、外部性の存在とは別に、市場の失敗を引き起こしかねないものです。預金者は金融機関の経営状態について正確な情報を保有しないとしても、通常はそれまでの経験や評判から金融機関を信認できるものとみなして、自らの資金の運用を金融期間に委ねています。

しかし、そうした預金者の信認が十分な情報的裏付けをもったものでないことは、偶発的な出来事やあるいは何らかの事情で信認の崩壊が起こりかねない恐れを絶えず伴っていることを忘れてはなりません。

例えば一部の金融機関が経営破綻を起して、預金の払い戻しが滞るといった事態が発生した場合、預金者の金融制度に対する信認は一気に崩壊する危険性があります。

預金者の保有する情報と判断力は限定されていることから、預金者は個々の金融機関の経営内容等の差異を不完全にしか識別できないがゆえに、特定の金融機関に不信を覚えた場合、それは往々にして健全な経営内容をもった金融機関を含む金融制度そのものに対する不信にまで進行してしまうからです。

預金者の払い戻し

また、個々の預金者にとって金融機関の信頼性に疑問をもった場合、直ちに預金の払い戻しを請求することが最も合理的な行動でもあります。預金の払い戻しを求めることは、預金者にとって正当な権利の行使なのです。

これに対して、金融機関の経営状態を調査し、確認しようとすることは預金者にとって極めて高い費用を要する行為となります。したがって、信認の崩壊は必ず預金の払い戻し請求に繋がることになります。一方で、現在の金融機関は基本的に部分準備で運営をされています。

預金者から受け入れた資金の殆どを貸し出しや証券投資に運用されており、そのごく一部しか支払い準備として保有していません。しかも、金融機関が保有する貸出や有価証券はたびたび固定的な性格のものが多く、即座に現金化しようとすると多大な損失が発生することになります。

それゆえ、預金者が一斉に預金の払い戻しを請求するような事態が発生すると、本来は支払い能力に問題のない金融期間であっても、支払い不能状態に追い込まれてしまいます。